東京の一部では06年暮れから07年の東京都知事選告示までの期間に奇妙なポターがあらわれた。A3サイズのポスターに石原慎太郎が拳を突き上げて・・・「東京がやる」。黒抜きの文字と石原知事のバストショットがやたらと大きい。ポスターは5万2000枚を印刷し、都内23区とすべての市町村に配布。デザイン、印刷等に要した費用は227万円。ところでこれは「花粉症対策」の行政ポスターだったのだ。「花粉」の2文字があることはある。しかしポスターの地の色が白なので、黄色で書かれた「花粉」の字は目立たない。「東京がやる」とは「宣言」したが、このポスターが出現したあとで花粉症が減ったかと言えば、まったくそうではなく、今年に至っては過去最悪状態である。
花粉症が増えたのは、①戦争で荒廃した山野に育ちやすいスギを多く植林した、その後はヒノキを植林したことよってそれらの木々の成長と営林事業の衰退・放置。②空気環境汚染や水質悪化の公害や、ディーゼルエンジンからの排出微粒子ほか空気中のダストなど。③土の露出が減って,アスファルトとコンクリートの地表が増えたこと。④密閉度の高い住居にダニの死骸やフン,新建材,ダスト。⑤食生活の高タンパク化かつ食品添加物の増加と継続摂取。⑥過剰な清潔志向や、人間と寄生虫や微生物との相互関係の歴史的な激変。⑦ストレス一杯の生活,無意識なストレスの蓄積。・・など(ほかにもあるかもしれない)のうちのいくつかの要因が複合的からみあってのことかと思われる。
スギ花粉からの「疎開」
花粉症の主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみとされ、一般に花粉症の4大症状と呼ばれる(耳鼻科領域においては、目のかゆみを除外して3大症状と呼んでいる)。中でも鼻づまりがもっとも不快な症状であることが多い。
自然治癒は期待できないし、毎年のように患者数は累積しているが、なかでも花粉症といえばスギ花粉症を指すと思われるほどになっているほど、花粉症のおよそ80%はスギ花粉症といわれる。そこから、最近はスギがない沖縄県や北海道へ、花粉を避けるための短・中期の旅行が企画された旅行会社の「商品」が増えているという(俗に「花粉疎開」と呼ばれる)し、観光資源の一つとして誘致に名乗りをあげる地域もある。患者が移住した例も報道された。医学的にみれば転地療養といえるが、このようなことは、労働者には簡単に望むべくもなく、つらい季節の終わりを待つしかない。
スギ植林の増加と営林放置
発症者が増えた原因としてあげられる最大のものとして、花粉飛散量が増え、それに曝露された者が増えたことであるのを否定する人は少ない。飛散量の増加の原因は、戦後、建材および手っ取り早い「治水・治山」の目的で全国に広くスギが植林され、それらが60年代後半より花粉生産力の強い樹齢30年程度に達し始めたためで、花粉生産量の多いスギ林の面積は増え続けている。
近年では飛散期間の長期化の指摘もある。これは、やや遅れて植林され成長が遅れていた標高の高い地域のスギの開花が、平地での開花に引き続いておこるためと考えられる。温暖化によって、飛散開始が早まってもいる傾向がある。
スギに10年ほど遅れて植林が広まったヒノキも、スギ同様に花粉生産力が強まった樹齢に次々と達している。ヒノキの開花期はスギより遅れるものの、やや重なるため、患者が症状を呈する期間も長引く傾向がある(スギ花粉症患者のかなりはヒノキ花粉にも反応する)。
それにも関わらず、「年間数百億円とも言われる花粉症対策商品の売り上げが景気刺激効果があるために、この問題を意図的に放置しているのではないか」と揶揄されるように、行政はスギ花粉の被害に対して有効な根本的対策をほとんど講じていない。
寄生虫エキス投与の朗報は・・
一部で寄生虫感染症との関連にも注目されている。IgE(免疫グロブリンE)は本来、ぎょう虫や回虫などの寄生虫が寄生したときに産生され、これらを排除するために働くものだとされる。60年代以降の日本では衛生環境の改善によって寄生虫感染症が激減したが、このことによって「攻撃する相手」を失った IgEが、寄生虫の代わりに花粉を攻撃するようになったというものである。寄生虫に感染していると大量の IgE が産生され、それがびっしりと肥満細胞を覆うため、のちに花粉に対する IgE が産生されても肥満細胞に結合することができないという説明もなされる。寄生虫感染の多い東南アジアでアレルギーが少ないことなどが根拠のひとつとされている。また肺結核の感染との背反性も指摘される。こうしたことから、寄生虫感染やそのエキスなどの投与によって花粉症というアレルギー症状が緩和されるという期待を持たされこともあった。
しかし、あらかじめ寄生虫感染を起こしていると花粉症発症は抑制されるが、花粉症になってから寄生虫感染を起こしても症状は抑制されないとか、寄生虫のエキスなどを投与して症状を改善しようという試みは、たしかに免疫のバランスが変化するものの、発ガン率が高まるなどの副作用の問題があるとされて、期待はしぼんでいる。
排煙・自動車排気ガス、大気汚染
ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる微粒子や、ガソリンエンジンからも排出される窒素酸化物、オゾンなどに長期間暴露されることにより花粉アレルギー反応の閾値を下げる、アレルギー反応を増幅する等の影響が指摘されている。70年代ごろから花粉症患者が増えた原因を、大気汚染の影響から説明するものとして有力とされている。モータリゼーションの進行とともに花粉症患者が増えていることも事実だ。大気汚染のないところでは花粉症が発症しないとまでは言えないが、少なくとも、自動車排ガスなどの大気汚染物質が症状を悪化させる要因(回復が遅れる要因)のひとつになり得ることには間違いない。
大気汚染物質としては、前述の自動車排ガスのほか、煙草の煙や換気の悪い室内での暖房時に出るガス状物質、黄砂や土ぼこりなどが、症状を悪化させるという要素もある。
都市化の影響
アスファルト舗装によりいつまでも空中を漂い続ける花粉数が増えている。そのほか、従来からの日本式家屋とは異なる高気密の住宅が普及したことも、花粉症が増えた原因のひとつではないかとも言われている。高気密ではあるが高断熱ではない住宅では局所的に湿度が蓄積されやすく、不十分な換気などによってダニ・カビが繁殖しやすい環境になる。これによって幼少児期のうちからハウスダストに対するアレルギー性鼻炎や小児喘息などを発症し、中にはそれが原因で花粉症にもなりやすくなっている人もいるのかもしれない。すなわち、なんらかのアレルギーになると、それがきっかけで違うアレルギーにもなりやすくなるのである。花粉症患者のかなりは、その発症以前にハウスダストアレルギーを発症しているという事実もあり、花粉症の素因を持った人の発症時期を早める影響は否定できないし、高気密住宅の多い都市部に花粉症患者が多くなることも説明ができる。
なおアトピー性皮膚炎の患者が、花粉症シーズンにかゆみが増すことも知られている。
帝国主義的矛盾
花粉症を発症させる原因は複雑であるが、いずれも今の世の中のありようの偏頗性・矛盾から生じている。自然の災禍ではなく、「人災」なのだ。新自由主義による社会のありかたの破壊が形を変えて労働者の健康を襲っているのだ。石原など打倒し、この社会のありかたを変えなくては解決しない。
花粉症を始め、疾病の多くは「帝国主義的」矛盾から生じる。資本主義は労働者の安全や健康を破壊することで成立しているのである。労働者が健康を取り戻すためにも帝国主義国家を打倒しよう。
ユニオン東京合同は、
「一人の首切りも許さない」
「一人は皆のために、皆は1人のために」資本と闘います
反戦・反核、改憲阻止、労働法制改悪阻止を闘っています。
2001年12月21日結成
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